全国災対連ニュース №73

全国災対連ニュース 2011年7月30日 №73
 
  救援復興へ院内集会・議員要請
   東日本大震災 被災3県の代表が現状報告
 全国災対連は7月27日、国会内で東日本大震災被災地の復興と生活再建をめざす集会を開きました。被災3県の代表をはじめ17団体42人が参加しました。
  「全国災対連ニュース」2011年7月30日 №73


 開会あいさつは住江憲勇代表世話人(保団連会長)がおこない、まず被災地の犠牲者に全員で黙祷をしました。そして、「7月25日に第2次補正予算が成立したが、予算の中心は東電救済策です。その中で、予備費の8,000億円をしっかり被災者救援に使わせなければならない。今日の集会で決意を固めて運動をすすめたい」と述べました。
  中山事務局長が「問題提起」
 中山益則事務局長が、次のように「問題提起」をしました。
 ①救援・復興の状況について
 <避難者と仮設住宅の現状>
 内閣府のデータ(7月14日現在)によると、避難所で生活をしている人は、被災3県の合計が1万6138人、全被災者数の22.75%を占めています。応急仮設住宅と「みなし仮設(旅館・ホテル)」入居者は4万4426人、全被災者の62.62%です。福島県は、旅館やホテルへ避難している人の比率が高く、原発災害の影響とみられます。
   避難生活a+b 公民館等a ホテル・親族等b 仮設住宅必要数  仮設住宅完成数
 岩手県 9339人    5006人   4333人     1万3833棟   1万080棟
 宮城県 1万5871人  1万3836人  2035人    2万2435棟   1万4836棟
 福島県 1万9484人  3455人   1万6029人   1万4000~1万5000棟 9069棟
 <被災地の救援・復興運動>
 岩手県=「東日本大震災救援・復興岩手県民会議」を7月9日に結成。
 宮城県=「東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター」を5月29日に結成。
 福島県=「東日本大震災・原発被害者の救援・復興をめざす福島県共同センター」を結成。
 <政府が提出の第2次補正予算が7月25日に成立>
 総額1兆9988億円。被災者にかかわる予算は、原発事故の健康調査2,754億円、二重ローン対策774億円、生活再建支援金3,000億円地方交付税5,455億円、予備費8,000億円などです。被災者生活再建支援金の予算は、基金への国の負担を50%から80%に増額するためのもの。
 ②当面の課題
 「みなし仮設」と仮設住宅に入居した人は「自立」とみなされ、災害救助法が適用されません。生活費に充てる義援金や支援金の早期支給、雇用問題が重要な課題になります。これらの問題を解決するため、「何でも相談会」運動を展開し、自治体への要求運動に取り組むことが重要です。
 政府の第2次補正予算には、被災者生活再建支援法の支援金引き上げや半壊世帯への支援などは入っていません。これから論議される第3次補正予算への要求を含めて、さらなる支援を求める運動が当面の課題になっています。「特区構想」や「復興税」などがもくろまれている、政府の復興基本法案の内容について、方針変更や修正を要求する取り組みも重要です。
 また、10月8・9日に宮城県内で交流集会を開く計画を、世話人会議に諮りたいと述べました。
  <被災地3県の代表が現状を報告>
 病院を再建し地域復興のシンボルに
岩手 鈴木露通さん(岩手県労連議長) 
 震災から4か月半、今なお余震が続いています。7月26日現在で死者4,612人・行方不明2,282人(そのうち認定死亡者400人近く)、この人数は正確につかみ切れていません。産業被害額は4,795億円、公共土木費は2,567億円といわれています。私たちは7月9日に岩手県民会議を結成しました。
 「医」についていいますと、これまで岩手県の地域医療を支えてきたのは、20の県立病院と5つの地域医療センターでした。それが津波で、陸前高田市の高田病院、大槌町の大槌病院、山田町の山田病院(いずれも県立)が使えなくなりました。全国の支援を受け仮設での診療が始まっていますが、入院機能がありません。この3病院を再建したいと思っています。6月9日発表された県の再建計画案には、このことが明記されていません。国は現状復帰が方針で、新たな土地には建てないといいます。国に要請するとともに県の復興計画案に明記させなければなりません。1万枚のはがき付きのビラを配布しました。第1次分として120通の返信がありました。公共病院が建つことで地域振興、希望のシンボルにしていきたい。
 「住」では、仮設住宅302団地1万3500戸が7月中に完成し、希望者全員が移行します。ところが、雨漏り、内装、設備などの不具合があって、818件もの苦情が県に来ています。大手プレハブ業者が建てたのですが、寒冷地仕様になっていないので、少なくとも標準仕様に変えないと寒くなると大変な事態が予想されます。7月17日に生活と健康を守る会は、釜石と大槌の仮設住宅2,752軒にビラを配り、相談会を開いたところ、「ハエが多い」「草が茂っている」「通院往復のタクシー代に2,000円かかる」「救援金を3回もらったら生活保護費を止められた」などの困りごとが出されたそうです。このような「相談会」を他の団体も開くことが大切です。
 「職」では、県が1万4531人雇用創出のための予算を組んでいるのですが、実績は2,805人に止まっています。中央最賃の答申は1円しか上がっていません。この問題は、岩手労連としても取り組んでいきます。
 「特区許すな」で共同のたたかい
宮城 及川薫さん(復旧・復興みやぎ県民センター事務所長) 
 5月29日に県民センターを結成し、事務所長に就いて2か月になります。県民センターをつくるにあたっては、神戸の学者・弁護士のみなさんから「県民こそ主人公の復興」の重要性についてアドバイスを受け、十数回の会議で準備しました。常駐のボランティアをおき事務所をいつも開けておくために、拠出金・賛助金500万円の募金目標を立て、現在430万円集まっています。結成集会には400人が参加しました。
 宮城県の村井知事は、復興会議を東京で開き、首都圏の財界に丸投げしています。本音は財界から金を引き出したいということのようです。復興会議は、漁港を3分の1に集約し、民間会社に権利を与えようとしています。私たちは7月3日に石巻で、漁業者とともに「特区許すな」の県民集会を開き170人が集まりました。漁業者と共同して村井知事と対抗していこうとしています。私は、漁業の町の団結の深さに感心しました。
 「3月11日以前の生活に戻せ」という声が挙がっています。雇用問題では、12時間労働で日当が7,000円~8,000円という低賃金で働かされています。瓦礫処理も大変です。魚が腐った悪臭、粉塵、ハエの発生など。学校の近くが瓦礫処理場になっている所もあり人権問題です。仮設住宅も不評で、仙台では25%が入居を拒否しています。民間アパートへの入居を希望する人が2万件を超すといわれます。このうち補助金が出て、入居出来たのは913軒にすぎません。
 福島第一原発の放射能によって、宮城で出荷した稲わらの被害が全国に広がり、1,871頭に疑いがあるということです。1頭100万円の取引価格が20万円に値下がりしています。政府は1頭5万円しか補償しません。今後、米も野菜の汚染も予想され深刻です。
 雇用対策も進んでいません。県は「予算がない、金がない」といって、被災者の生活再建に手を打っていません。これでは困った人が救われません。8月2日に県庁を包囲し、県民の怒りをぶつける大集会を準備しています。
 福島から、日本から原発をなくす運動を
福島 斉藤富春さん(救援・復興をめざす福島共同センター代表委員)
 <現状について>6月の下旬に、南相馬市で93歳の女性が「私はお墓に避難します。ごめんなさい」という遺書を残して自殺しましたが、この間に6人の方が自ら命を絶っています。
 ①原発事故は収束のめどが立っておらず、放射線被害は拡大しています。政府は、新たに特定避難勧奨地点という、世帯単位の避難指示を出しました。地域分断がいっそう広がっています。②セシウムで汚染した稲わらを食べた肉牛が、内部被ばくしていたという深刻な問題が出ています。③NHKの調査によると、夏休みに小中学生1,066人が転校するといいます。すでに幼稚園から高校まで1,200人が転校しています。このうち何人戻るか分かりません。校庭の徐染(土を取り除く)で窓が開けられるようになったものの、エアコンがないので教室の温度は35度にも。室内に扇風機が4台ありますが、鼻血を出す子がいます。校庭で遊ばないので体力が落ちています。④使用済み核燃料を処理するだけで2020年までかかり、廃炉には数十年かかるといわれると、覚悟はしていても気持ちが萎えてしまいます。
 <現在の到達点> 私たちは、42万枚の署名簿付きの県民アンケートを、地元紙に折り込んで配りました。2,000通近いアンケートの回答と5,000筆の署名が集まっています。
 6月24日に開いた集会の参加者は1,000人を超え、5人の町長からメッセージが寄せられました。7.2中央集会にも300人以上が参加しました。県の復興ビジョン検討委員会は、「脱原発」を明確にしています。県議会も「脱原発」の決議をしました。最終的な判断は県知事がします。
 知事が「脱原発」の決断をするよう世論を広げることが大切です。アンケートへの回答では、「廃炉」が86%、「東電に損害賠償を請求したい」が81%、「一番困っていること」は、放射能被害が80%でした。
 <今後の課題> 東電への損害賠償請求運動では、どの組織にも入っていない被害者を救済する窓口がないので、共同センターで対応したいと思います。現在までに農・漁業の損害請求額は19億円ですが、東電は1円の仮払いもしていません。東電は行き詰まっています。福島県が設置した原子力賠償対策協議会に、福島県労連、福商連も入ることが決まりました。こういう変化が起きています。私たちは単に東電に償えということだけでなく、東電の責任を追及し、福島から、日本から原発をなくす運動に取り組んでいきたいと思います。
 放射線から子どもを守るための運動を強めたいと思います。今、民医連の協力で、健康状態の変化を記録する「私の行動記録ノート」に取り組んでいます。
 11月初旬には、全国規模の「脱原発」集会を計画しています。ご支援をお願いします。
 千葉県労連の代表は(フロアー発言で)、3月11日の大地震の際に千葉県浦安市や利根川沿岸で発生した液状化被害について次のように報告しました。
 埋め立て地は県が造成し、不動産業者が住宅を建てたもので、まさしく人災。ボーリング調査すると抵抗なく50メートルは入ってしまいます。70メートルの杭を打たないと安定した地盤に届きません。千葉県は5月議会で被害世帯1戸あたり100万円の給付を決め、自治体も上乗せします。しかし、同じ所に家を建てられないという問題があります。被災者生活再建支援法の対象に液状化被害も入れるべきです。
 農地・田圃にも被害が出ています。あるキノコ農家は、室内栽培のキノコが放射能汚染の風評で売れなくなり電気代を滞納したところ、電気を止められたと怒っています。
 
 フロアー発言では、兵庫の代表が阪神淡路大震災の教訓と現状、新潟・柏崎の代表が原発立地による地元産業の衰退の現状について報告。新建築家技術者集団(新建)、全日本民医連の代表などが、現地支援に入って気づいたことや支援の取り組みについて報告しました。
 報告のあと、中山事務局長が、①当面する被災者支援では、仮設住宅に移行したことによる生活費対策。何でも相談会の実施 ②政府に「被災者が主人公」に立った支援を要求していく ③生活再建支援法の抜本拡充、などの行動提起をおこないました。最後に羽田範彦・全国災対連事務局次長(民医連)が閉会あいさつを述べ、院内集会は終了しました。
 院内集会の後、議員要請行動
 院内集会終了後、参加者は2~3人の組で衆議院の東日本大震災復興特別委員会と災害対策特別委員会に所属する議員事務所を訪ね、被災者生活再建支援法の抜本改善を要請しました。