全国災対連ニュース 2009年1月20日 № 59
第10回定期総会 新年度方針を決定
シンポジュウム5月開催や『マニュアル』発行
全国災対連ニュース № 59
全国災対連は阪神淡路大震災14周年の前日に当たる1月16日、神戸市勤労会館
で第10回定期総会を開きました。総会には全国災対連加盟の中央団体をはじめ、
宮城、新潟、石川の地域災対連、地元の阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議
(以下、兵庫県民会議と略)など14団体47人が参加しました。大黒作治全国災対
連代表世話人(全労連議長)が主催者あいさつをおこない、第10回という節目を
迎えた災対連運動の役割について、「政治を動かし、07年に被災者再建支援法の抜
本改正ができたのも災対連があったからこそ」と述べるとともに、「派遣切りに見ら
れるような『政治災害』ともたたかっていかなければならない」と強調しました。
来賓の仁比聡平参院議員(日本共産党)は、「10年前に結成された災対連は、被
災者の要求を組織し運動にしてゆく上で歴史的画期をなすものだった」と激励し、
連帯を表明しました。民主党の藤本祐司衆院議員、社民党の日森文尋衆院議員、気
象庁労働組合から寄せられたメッセージが紹介されました。
08年度の到達点と09年度方針(案)を中山事務局長が説明
第1号議案「1年間の取り組みの到達点、新年度方針(案)」の説明は、中山益則
事務局長がおこないました。
1年間の取り組みでは、08年8月30・31日の「研究・運動全国交流集会」が、改
正支援法の実効性を検証し、支援運動の歴史的経過を検討して、今後の展望を明らか
にするうえで、全体として成功したと評価しました。
新年度の活動方向としては、被災地の支援強化や被災者生活再建支援法のさらなる
改善と諸制度の改善に取り組むことなどをあげ、具体的な計画としては、5月中旬に
東京災対連と協力し、シンポジウム「首都直下型災害・地震とどう対応するか」(仮
称)と『災害対策マニュアル』発行を記念した集会を開催します。
各地で問題になっている、被災家屋の被害認定をめぐる「運用基準」についても、
被災者が納得できるものに改善する検討と被災地での討論を呼びかけ、「提言」をつ
くり秋には内閣府に申し入れたいと述べました。
『災害対策マニュアル』について
懸案になっていた『災害対策マニュアル』は第9回総会後立ち上げたプロジェクト
ムで原本が作成され、今回の総会で配布されました。原本は2月20日チーまでに各
組織からの意見を集約したうえで、コラムや写真を準備し、5月には発行します。
千代崎世話人が補強発言
プロジェクトチーム責任者の千代崎一夫世話人(新建築家技術者集団)議案を補
強する発言をおこない、「現行の被災家屋の判定は、事前に何ら教育を受けていない
自治体の税務職員が担当しているなどの制度的な欠陥がある。改善に向けた具体的
取り組みが必要だ」と訴えました。
2回目の厳しい冬を迎える中越沖地震の被災地
柏崎・刈羽災対連の五位野和夫事務局長は中越沖地震被災者の現状について「2
回目の厳しい冬を迎えている。新潟県災対連と一緒に改めて現地調査をし、柏崎市
と交渉をした。現地での聞き取りという裏付けがあったので前向きな回答も引き出
せている」と報告しました。
石川、宮城両県の災対連代表も実態を報告
石川県災対連の長曾輝夫事務局長は能登半島地震被災後の実情を報告。「仮設住宅
に329世帯736人が入居したが、今なお4割の人が残っている。若者が地元を離れ
高齢者が増えてるので対応が必要だ。08年7月に浅野川がはんらんしたが、災対連
が結成されていたので震災時の経験を生かすことができた」と述べました。
宮城県災対連の高橋正利代表世話人は「宮城県北部連続地震の後、県災対連を結
成した。岩手宮城内陸地震災害の被災者は、栗原市では60世帯159人が今も仮設住
宅に入っている。地盤が崩れた場合、家は一部損壊でも1000万円ぐらいかかるが支
援はない」と報告しました。
新潟県災対連の宍戸末雄事務局長代理は、「地盤災害で支援事業はできているが、
適用されないケースが多いなどの問題があり、制度の改善が必要だ」と述べました。
兵庫県震災復興研究センターの出口俊一事務局長は、「被害認定と救援策をリン
クさせない、方策が必要だと考えている。鳥取では被害認定を抜きにして緊急に支
援をした。それと、災害救助法の改正を含めた復興制度の全体像を考えるべきでは
ないか」と提案しました。
このほか、坂巻幸雄世話人が「地盤災害がクローズアップされてきたが、都市部
の丘陵地開発や地滑りによるダムの危険性など多くの問題がある」と指摘しました。
昨年の研究・運動全国交流集会の「提言」作成に参加した岡部孝次さんは、「国の
『私有財産に公費は投入できない』という論理はいろいろな形で生きており、克服
されていない。しかし、07年の支援法改定では、支援金の年齢・収入要件を撤廃し
『私有財産論』を実質的に打ち破った」と制度の矛盾点、解決の方策について発言
しました。
決算・予算(案)を含む全議案を採択
中山報告および会場からの発言、第2号議案(決算報告=伴香葉事務局次長)、第
3号議案(会計監査報告=牧伸人監事)、第4号議案(予算案=伴香葉事務局次長)
の財政関係の提案があり、すべての議案を全員の拍手で採択しました。
新年度役員には、大黒作治(全労連議長)、住江憲勇(保団連会長)、合志至誠
(兵庫県民会議代表委員)の3人の代表世話人、17人の世話人が選任されました。
閉会のあいさつは住江憲勇代表世話人がおこない、「昨年はC型肝炎や子どもの医
療保険の確保などで政府に対策を取らせることができ、反撃態勢をつくった。今年
は実をとる年にしていこう」と訴えました。
事務局長・事務局次長は留任
総会後ただちに開かれた第1回世話人会で、中山益則事務局長、伴香葉事務局次
長、谷川正嘉事務局次長(いずれも再任)、中山真監事(新任)が承認されました。
事務局員は全員留任します。
阪神淡路大震災14年 「長田の復興を考える」メモリアル集会
阪神淡路大震災14周年の1月17日、兵庫県民会議主催のメモリアル集会が神戸
市長田区の新長田勤労市民センターで開かれました。全国災対連はこの集会を後援
しました。
震災後、長田区は新長田駅周辺を中心に大型再開発事業を続けましたが、高層ビ
ルは林立したものの人口は回復せず、地元商工業も復興していません。集会では、
復旧・復興に取り組んでいる商店街振興組合副理事長、FMの代表取締役、ケミカ
ルシューズ工業組合事務局長、まちづくり協議会会長が現状を話しました。
記念講演を神戸大学の塩崎賢明教授がおこないました。講演で塩崎教授は、「この
14年は何だったのか」と問いかけ、震災直後から住民意向を聞かないですすめられ
た再開発や区画整理事業の問題点を指摘しました。そのうえで、▽地域の宝を発見
して磨き、外に向かって働きかける、▽政治・行政に要求するとともに、依存しな
いで自立をはかる、▽新たな被災地・被災者と交流する、ことを解決の方向として
示しました。